政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「婚約指輪を毎日つけるのが嫌なら、婚約を公式発表するけど?」

美麗な笑みを浮かべて、私に左手の薬指を出すように要求する彼に逆らうことはできなない。

長い骨ばった指がケースを開ける。世界に名を馳せる一流ジュエリーショップのロゴが目に入る。大きな一粒ダイヤを取り囲むように小さなダイヤがいくつも並ぶ指輪は豪華絢爛としか言い表せない。キラキラ輝くそれはまさに宝物のようだった。ただしその豪華さは私の理解の範疇を超えていた。


「……なんですか、これ」
「婚約指輪」


当たり前だろ、と言いたげに彼は眉を顰める。


「違います! こんなに豪華なものは必要ありません。もったいないです、こんな立派なもの恐くてはめられません」


率直な意見を述べると、彼が口角を上げて綺麗な漆黒の瞳を細める。

不機嫌さを露わにした表情に腰が引ける。この人は対外的にはとても愛想がいいし、言葉遣いも丁寧なのに私の前ではとても辛辣だ。

「梁川の後継者の婚約指輪なんだから当たり前だろ? 普通に喜べないのか?」
その言葉が胸に刺さる。グッと続けたかった言葉を呑み込んだ。

そういうことを言いたかったわけじゃない。ケチをつけたつもりでもない。私たちはお互いのメリットのために結婚するのであって、そこに愛情があるわけではない。

それならばお互いを縛るような婚約指輪とかそんな形式ばったものをできるだけ排除したほうががいいと思っただけだ。無駄なお金をかけるのは勿体ない。そのほうが私に煩わされる時間も減り、多忙なこの人の負担も減るだろう。

ただ、そう考えただけだったのに。
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