政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
私の気持ちとは裏腹に、彼と私の結婚準備は粛々と進んでいった。

結婚式、披露宴は遠慮したいと私は事前に彼に懇願していた。今後私と彼が別れることになった時に悪影響になる。私と彼の結婚を知っている人は最小限にしたほうがいい。そう思って進言した願いは彼にあっさり受け入れられた。

とりあえず今は入籍できればいいと言われた。ただし、いずれは結婚式を挙げることを強制的に了承させられた。

「結婚式を挙げないことを了承してくださったのにどうしていずれは挙げる、になるんですか?」
話が違うと問いただす私に、彼はいつも通りの何を考えているのかわからない厳しい表情で言った。

「いずれはいずれ、だ。入籍していることを隠すつもりはないし、今後は様々な招待にも参加することになる。誰かに挙式のことを尋ねられたら不自然だろ?」
「それは……急な入籍だったからまだ準備が整っていないとかふたりで挙式について熟慮しているとか言えばいいだけではないですか?」

言われている意味は分かる。
彼の立場上、パートナーのお披露目の場所が必要なのだということも。

苦しまぎれの言い逃れをする私を、彼はスウッと氷のように冷たい目で見据える。明らかに不機嫌になっているとわかるその表情に腰がひける。綺麗な顔立ちの人はそれだけで十分迫力があって恐い。

私は何か怒らせるようなことを言ったの?

「そんな簡単にすませられるわけないだろ? いいか、時期がきたら必ず挙式は行うからな。覚悟しておけよ」

最初に言っていたことと話が違う! 

心の中で盛大に悪態をついたけれど、彼の眼光と漂う空気の冷たさに実際に声は出せなかった。どうして彼は私の意見を聞いてくれないのだろう。
< 57 / 157 >

この作品をシェア

pagetop