政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
その後、彼のご両親に挨拶に伺った。

彼から事前に、私たちの結婚は叔母に話したとおりの経緯にしてあるので、余計なことは話すなと念押しされた。

彼のご両親といえば梁川グループの社長夫妻だ。
社長はニュース等でも度々目にするほど著名な人だ。五十代半ばの夫婦仲はとてもよいことで知られている。夫人、環さんのお母様は挨拶に伺うと、突然の勝手な結婚話に驚くこともせず、手放しで喜んで賛成してくださった。

「いつまでも身を固めない放蕩息子がやっとお嫁さんを連れてきてくれたんですもの。こんなに嬉しいことはないわ!」

環さんはお母様に似ているのだろう。男性にしては柔らかい曲線を描く輪郭と、目の形がよく似ている。梁川社長夫人はとても若々しく綺麗な女性だった。

私を娶ったところで、彼のメリットは事業用地の獲得が少し有利に進むかもしれないというだけだ。彼には素晴らしい花嫁候補がいたはずなのに、どうしてこんなに歓迎してくださるのかよくわからない。
建前だけの政略結婚だというのに。そのことにツキリと胸が痛んだ。

梁川社長にも何ひとつ反対されなかった。
上品な皺が刻まれた顔を綻ばせて新居はどうするのか、私の仕事はどうするのか、個人的なことを尋ねられたくらいだった。

梁川グループ会長で彼の祖父も同席してくださっていた。私にほんの少し昔の友人の面影があるといって嬉しそうに握手をしてくださった。
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