政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
もしかしておばあちゃんは私が策略結婚をしようとしていることに気づいている?

ドクンドクンドクン、緊張で鼓動が速くなっていく。手元に置いてある茶器が私の手に当たってガチャンと耳障りな音をたてる。

「大丈夫。環さんは私のことをとても大事にしてくれているから」
ギュッと奥歯を噛みしめて無理やり笑顔をつくる。

落ち着かなきゃ。おばあちゃんに疑われてしまう。そんなことになったら皆に迷惑がかかってしまう。

「事業用地って……どういうこと?」
できるだけ自然な声を出して尋ねる。祖母を騙しているようで申し訳なかったが、祖母が知っていることを聞きたかった。

「以前から梁川さんには澤井が管理している土地を購入したいと言われていたんだ。そこに新しい商業施設を建設して、出店する計画があるらしくてね」
ゴクリと喉が鳴った。祖母は私よりも事態を正しく理解している。

「彩乃と婚姻関係になれば、こちらの言い値で購入しなくとも確実に土地が手に入るとあちらさんが思って、彩乃が無理強いされたんではと心配になってね」

暗に私が脅されてこの結婚を了承したと言っている?

「で、でもそれって私にはなんのメリットもない話よね? わ、私が環さんと結婚することで受ける恩恵とかそういうことっていうか……」

自分で言っていて情けなくなるくらいうまく言葉にできない。どう考えても怪しいかもしれない。

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