政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
彼が用意してくれていたピンク色のスリッパに足を通して、私は彼の姿を追う。廊下の幅も何もかもが私のマンションとは比較にならない。

廊下の先にあったリビングは一面ガラス張りで眼下には綺麗な東京の夜景が広がっていた。宝石箱をひっくり返したみたいにキラキラした外の世界。

完全に場違いな私。
本当にどうしてこの人は私を娶る決心をしたのだろう。

「ソファやダイニングテーブルは適当に揃えた。気に入らなければ言ってくれ」

先程と似たような言葉を彼が言う。

今日も彼のスーツ姿は完璧だ。隙のない装いに彼の綺麗な顔立ちが際立つ。私は小さく首を横に振った。

コの字型に配置されたソファは真っ白の革製だった。楕円形のセンターテーブルはガラス製で部屋の照明に反射して輝いていた。

置かれたクッションカバーは赤やピンクの綺麗なグラデーションのものが幾つか置かれていて華美だった。

深いチョコレート色の六人掛けのダイニングテーブルセットもとてもセンスの良いもので文句のつけようがなかった。

そもそも価値のわからない私には、これがかなり値の張るものなのだろうという予想しかできない。文句なんてとんでもない。

「君の部屋は一応用意してある」

私の胸中を察したのか、彼がおもむろにそう言った。
ビクリ、と肩が跳ねた。恐々彼の顔を見つめ返す。

「……まだ緊張してるのか?」

私の反応に彼の声が少し低くなる。何か機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうか。
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