政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
「……行ってらっしゃいませ」
呟いた言葉は彼に届いたのだろうか。いや、きっと届いていないだろう。
私は強張った身体をほぐすように再び溜め息を吐いた。
「ベッドのこと聞き忘れた……」
彼の返答と機嫌に意識が向いていてすっかり忘れていた。
この部屋中を探せば寝具のひとつくらいは見つかるかもしれない。
取り残された私はペタンとフローリングの床に座り込んだ。
四月下旬の今は日中は暖かいが、夜になると急に冷え込むことが多々ある。そのわりに室内は快適な温度になっていた。きちんと空調が管理されているのだろうか。
それすらわからない。根本的なことを彼に尋ね忘れている。
バッグに入れてあるスマートフォンを取り出しかけた手を途中で引っ込める。こんな些細なことで彼を煩わせるわけにはいかない。
どこか探せばスイッチや説明書くらいは見つけだせるだろう。寝具だって探さなくてはいけないのだし。こんな広い部屋にひとりだし、皮肉なことに時間はたっぷりある。
回らない頭でゆっくりと荷解きをしているうちに軽く空腹を覚えた。自室の壁にかかってあるお洒落な時計を見ると八時半を過ぎていた。
何か作ろうかと思った瞬間、この部屋のキッチンの勝手も知らないことに気づく。冷蔵庫を勝手に開けてもいいのだろうか。そんなことすら気になってしまう。
そもそも冷蔵庫の中に食材はあるの? なかったとしたらこの近所にスーパーマーケットはあるの? コンビニエンスストアは?
この周辺は都心でも指折りの高級住宅街だ。訪れる機会なんてなく、この界隈の地理には全く明るくない。
スマートフォンをバッグから取り出し、周囲の情報を確認する。幸いなことに徒歩五分ほどの場所にコンビニエンスストアがあることが分かった。
そこに行って何か食べ物を買おうと思った瞬間、根本的なことに思い当たる。
呟いた言葉は彼に届いたのだろうか。いや、きっと届いていないだろう。
私は強張った身体をほぐすように再び溜め息を吐いた。
「ベッドのこと聞き忘れた……」
彼の返答と機嫌に意識が向いていてすっかり忘れていた。
この部屋中を探せば寝具のひとつくらいは見つかるかもしれない。
取り残された私はペタンとフローリングの床に座り込んだ。
四月下旬の今は日中は暖かいが、夜になると急に冷え込むことが多々ある。そのわりに室内は快適な温度になっていた。きちんと空調が管理されているのだろうか。
それすらわからない。根本的なことを彼に尋ね忘れている。
バッグに入れてあるスマートフォンを取り出しかけた手を途中で引っ込める。こんな些細なことで彼を煩わせるわけにはいかない。
どこか探せばスイッチや説明書くらいは見つけだせるだろう。寝具だって探さなくてはいけないのだし。こんな広い部屋にひとりだし、皮肉なことに時間はたっぷりある。
回らない頭でゆっくりと荷解きをしているうちに軽く空腹を覚えた。自室の壁にかかってあるお洒落な時計を見ると八時半を過ぎていた。
何か作ろうかと思った瞬間、この部屋のキッチンの勝手も知らないことに気づく。冷蔵庫を勝手に開けてもいいのだろうか。そんなことすら気になってしまう。
そもそも冷蔵庫の中に食材はあるの? なかったとしたらこの近所にスーパーマーケットはあるの? コンビニエンスストアは?
この周辺は都心でも指折りの高級住宅街だ。訪れる機会なんてなく、この界隈の地理には全く明るくない。
スマートフォンをバッグから取り出し、周囲の情報を確認する。幸いなことに徒歩五分ほどの場所にコンビニエンスストアがあることが分かった。
そこに行って何か食べ物を買おうと思った瞬間、根本的なことに思い当たる。