政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
私、この部屋の鍵を持っていない。
これじゃ外出できない。


彼から合鍵を受け取っていないのだ。しっかり者の彼にしてはとても珍しい。

むやみやたらに外出するな、ということだろうか。

そう言えば外出の予定があるのかと聞かれた。勝手な行動は慎まなければいけないのだろう。

さらに細い溜め息を吐いて項垂れた。私はどうしたらいいのだろう。

その時、玄関の呼出音が鳴った。


もしかして……! 環さんが帰ってきた?

急いで玄関のドアを開けると、驚いたような表情の綺麗な女性が立っていた。

「赤名、さん?」
目の前に立っていたのは彼の秘書の赤名さんだった。

「こんばんは、奥様。夜分突然に申し訳ございません」
秘書らしく礼儀正しい挨拶をする赤名さん。

今日も今日とて身体にぴったりフィットした明るい紺色のスーツを身に着け、濃いベージュのパンプスを履いている。マーメイドラインのスカートはサイドにプリーツが入っていて、センスの良さが窺える。

「こ、こんばんは……あの、環さんでしたら会社に」
おずおずと主の不在を告げると、赤名さんは驚くこともなく返答する。

「存じております。専務の指示でこちらに伺いました」
「そうなんですか……」
環さんの指示とは一体なんだろう。

「差し支えなければお邪魔してよろしいですか? お渡ししたいものがございますので」
手にした大きな白い紙袋を私に見せて、赤名さんが事務的な口調で言う。

「は、はい、もちろんです。気づかなくてすみません」
慌てて私は玄関ドアを大きく開けて、赤名さんを玄関に招き入れる。
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