政略結婚ですがとろ甘な新婚生活が始まりました
弁当箱を入れた紙袋をそっと抱えてマンションを出た。以前買っておいた大きめの弁当箱とタッパーが役に立った。


抱えた重さがなんだか嬉しくて思わず頬が緩む。


午後六時半を過ぎて、周囲には夜の帳が降りはじめていた。日中よりもひんやりした空気が肌にまとわりつく。

膝下丈のサーモンピンクのワンピースにベージュのロングカーディガンを着てきてよかったと思った。

ベージュのパンプスを履いた足を急がせて、最寄り駅に向かう。通勤ラッシュが始まる時間のせいもあり、家路を急ぐ人で駅は混雑していた。

最近はずっと送迎してもらっていたので、電車に乗ることも久しぶりだ。

都心方面に向かう車内は思った以上に空いていた。空席に座り、流れゆく景色をぼんやりと車窓から眺めていた。

電車を降りるまでは平気だったのに、いざ梁川百貨店の本社ビル前に到着した途端に一気に緊張が襲ってきた。

日本橋にある梁川百貨店のすぐ隣の、二十五階建ての建物が本社ビルになっている。

ドキンドキンドキン、と鼓動が早鐘をうつ。
紙袋を持つ私の手は嫌な汗でじっとりしている。

私の会社よりも煌びやかで広い入口を足早に通り抜ける。信じられないくらいに高い天井、ピカピカに磨かれた大きなガラスウォール。

退社時間が過ぎたのか、受付には誰もいなかった。

オフィスに向かうエレベーター等があるフロア前には社員のみが入れるようにセキュリティゲートがある。

ここまで来て私は彼に連絡を入れていなかったことを悔やむ。浮かれていた自分の気持ちがどんどん萎んでいく。環さんを驚かせたかったが、このままでは彼に渡すことができない。

私の馬鹿! これじゃ元も子もないじゃない。どうしよう、赤名さんに連絡したらいいかな?
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