一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「どんなことですか?」
「今からここを抜け出して、俺と一緒にある場所に行ってほしい」
「ある場所?」
一体どこへと今度はしっかりとユリウスと視線を合わせる。
抜け出してまで行きたい場所とはどこなのか。
そもそも、ユリウスは部屋の扉ではなく窓から訪ねて来た程だ。
きっとイアンの許可を得ることが難しい場所なのかもしれないとメアリは予想した。
「それはあとで説明する。俺の願い、叶えてくれるね?」
急いでいるのか、ユリウスは背中に添えていた手を離すと、代わりにメアリの手をとる。
「抜け出して、いいのかな?」
フォンタナへは遊びに来たわけではない。
明日は朝から軍議も控えている。
何かあったら迷惑をかけてしまうかもしれないと悩むメアリの手を、ユリウスはそっと引いた。
「大丈夫。前もうまく抜け出せただろ?」
抜け出せただけでなく見つかることなく帰ってこれた。
ましてここは城よりも警備は緩いと説得され、メアリは少し迷ったが結局首を縦に振った。
他ではない、いつもメアリの側にいて守ってくれているユリウスの願いであり、確かに交わした約束なのだからと。