一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
皇帝の滞在する部屋は以前と変わらない場所にあり、衛兵に許可を得ると扉を開けた。
執務の最中だったのか、皇帝は目を通していた書類に印鑑を押している。
「失礼します。ルシアン皇子から私をお探しだと聞きました」
メアリの声に視線だけ上げた皇帝は「そうだ。頼みがあるのだ」と話し、書類を丸めた。
「そなたに頼んでいたポプリだが、アクアルーナに帰るのであれば叶うまい。であれば、マグダにそなたの作り方を伝授してほしいのだ」
皇帝に頼まれていたオレンジフラワーのポプリ。
摘みに行く前にモデストがやってきてメアリを牢に入れた為、全く手付かずの状態だった。
この件についてはメアリもどうすべきか悩んでいた為、申し出をありがたく受ける。
「気に入っていただけて嬉しいです。このあとすぐにマグダさんに伝えておきますね」
「感謝する」
ゆっくりと頷いた皇帝は、初めて会った時と変わらず貫禄があるものの、何者も寄せ付けないような空気が少しだけ和らいでいた。
モデストという重荷を下ろせたからかもしれないと考えたメアリは、気になっていたことを勇気を出して口にする。