一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「あの、ひとつお伺いしてもいいですか?」
「申してみよ」
「真実を知りながら、なぜモデストの好きにさせていたのですか?」
昨夜、皇帝はモデストがボワの生まれであること、ヴラフォスに復讐心を持っていることを知っているのだと明かした。
恨みを向けられていながら、なぜ受け入れていたのか。
皇帝は丸めた書類に紐を巻くと目を伏せた。
「……息子らは、王妃の不貞をモデストが仕組んだと思っているが、あれは仕組まれたのではない。王妃が我が親友に興味を抱いていたのは知っていた。それはモデストが余のところにやってくる少し前からだ」
ヴラフォスの王妃は、元々奔放な性格だったと皇帝は語る。
興味のあるものはすぐに試し、欲しいと思ったものは手に入れたがった。
モデストはそれを利用したのだ。
そして、易々と操られ親友との危うい関係に溺れた王妃は皇帝の暗殺を企てた。
刃を向けた王妃の狂ったような顔に、皇帝は見ない振りをやめた。
その後、親友の裏切りもモデストがどこまで仕組んだかは皇帝にはわからない。
けれど、唆されて撥ね付けることもできずに命と皇帝の座を狙ったことに絶望したのははっきりと覚えているのだと話した。