一途な騎士はウブな王女を愛したくてたまらない
「モデストを殺してやろうと思った日もあった。だが、先にあやつに絶望を与えたのは余だ」
「……ユリウスをアクアルーナへ向かわせることに賛成したのは、なぜですか?」
「質問はひとつではなかったか?」
「あっ……」
うっかり二つ目の質問をしてしまったメアリは、しまったと手で唇を抑える。
皇帝は軽く肩を揺らして笑みを漏らすと「まあ良い。答えよう」とやや瞳に強さを滲ませ答えた。
「大事なものならば、遠去けねばならぬ。例え子らに憎まれても」
皇帝とは、そういうものだと続けた父としての想いに、メアリは心打たれる。
きっと、ルシアンをイスベルに留めているのもモデストから離す為だったのだろう。
話が聞けて良かったとメアリが伝えた時、ノックの音が聞こえ、ユリウスが通された。
ユリウスはメアリがいることに驚きを隠せず瞬きを繰り返す。
「何用だ」
皇帝の低い声が用件を促せば、ユリウスの目がハッと我に返った。
「イアン殿や近衛騎士の者たちのところに行ってきました」
「結果は」
「反対しない者がいなかったわけではないのですが、謝罪を受け入れてもらい、あとはメアリ王女次第だと」
自分の名前が出てきて、メアリはユリウスの横顔を見つめる。
しかし、ユリウスは父である皇帝の目を真っ直ぐに捉えたままだ。