とろけるようなデザートは、今宵も貴方の甘い言葉。

 御節に休み中に作った鳥ハムと、燻製のベーコン、筑前煮、そば、お雑煮。
 喬一さんはどこに出ても恥ずかしくないほど、一流の料理の腕前をしていた。

 これが趣味というから不思議。一流レストランの料理人と言われたら全力で納得してしまう。
 最初、一人で作ってるときは達成感と私の感想で満たされているように見えた。
 一緒に作るようになって、小さなこだわりを教えてくれる時に彼らしい几帳面な部分が垣間見えて、それで教えるのが楽しそうに見えたっけ。
 彼は料理後に味として現れる結果が好きなんだと思っていたけど、今は私に教えるロコ美も知った、ということなのかな。

 そばを食べながら「おいしい!」と驚いた私に笑っていたのだから。




「紗矢、冷えるよ」
 朝日を見たくて二階から初日の出を眺めていたら、大げさにコートを二枚も羽織わせてもらった。

「夕方ぐらいに初詣行きたいな」
「いいね。熱が下がったら、だけど」

 コートを二枚羽織り、尚且つ後ろから、喬一さんのコートに覆われ抱きしめられる。
 そうだね。熱が下がったら行きたい。林檎飴とチョコバナナと焼きそばも食べて、おみくじで大吉を引きたい。
 一緒に朝日を拝みながら、緩やかにただそう願う。
 私も多くを望むわけじゃない。
 ただ仕事中はピリピリしないといけない彼の、帰る場所としてちゃんとしたい。

「喬一さん、今年もよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、今年もよろしくお願いいたします」

 鼻が冷たいよ、とお互いの鼻を擦り合わせてから、新年初めの甘いキスを交わしたのだった。


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