Jelly
「ま、いっか」
クローゼットからTシャツとハーフパンツを引っ張り出して、ビーチサンダルをつっかけた。

 アパートから一歩外に出たとたん、ビル蝉の大合唱が聞こえてくる。やばい、夏だ。わけもなくテンションが上がって走り出す。

 女の子のキャミソールと細い肩。真っ黒に日焼けした子供。クソ暑いのに汗だくになりながらスーツ着てるおじさん。英語で書かれたアイスクリームの看板と、日陰で昼寝する猫。

 ちょっと周りの世界に目を向けると、いつもの道が少しだけ違って見えるから不思議だ。

「あ、やべ。ヘッドフォン忘れた」

 足に一旦ブレーキをかけたけど、戻ってる暇はなさそうだ。電車に乗る時間だけがゆっくり音楽聴くチャンスなんだけど。あきらめてもう一度走り出す。

横断歩道を渡りきって京急川崎の入り口に立った。ふと空を見上げると、雲の切れ間から僅かに太陽が顔を出した。


※つぎのページからおまけです。優月がS巻くんという青年と会う話です(短いです)
たぶん、Jellyを読んでくださった方はシリーズ読者様だと思うのでわかるかなあ、と思います。
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