【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「その節は大変失礼いたしました。言い訳にもなりませんが、あの日が初めての披露宴でして」
そう言った彼は、大学生で神永さんに憧れてここでアルバイトを始めたことを話してくれた。
「あの日も、何もできなかった僕に代わって、社長がすべて対応してくださって――」
本当に神永さんのこと尊敬しているんだな。こんなにうれしそうに話をするなんて。
「で、本日はどういったご用件で?」
「あ! 時間!? 失礼します」
神永さんのことをうれしそうに話す彼につられて、すっかりアポイントのことを忘れるところだった。
一礼をしたわたしは急いで建物内に入り、彼の待つ社長室へと急いだのだった。
結婚式場であるエスポワールを抜けると、その奥に同じようなレンガ造りの建物がある。そこがケイウエディングの本社だ。
社長である神永さんは本来ならば、この本社の社長室で過ごす時間が多いはず。
しかし以前訪問したときに坂上さんに聞いた話だと、現場主義の神永さんは普段はエスポワールの事務所で過ごすことも多く、自ら接客することも少なくないと聞いた。