【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
今日は本社の社長室を尋ねるようにと言われていたので、急いでそちらに向かった。

 受付にある電話で、総務の番号を押して連絡をとると坂上さんが中から出てきてくれた。

「お待ちしておりました」

 丁寧に頭を下げられ、あわてて「こんにちは」と挨拶をする。

「社長室にお通しするようにと言われております。こちらへどうぞ」

 エレベーターに乗り、三階で降りた。一番奥のマホガニーの扉を坂上さんがノックした。

「どうぞ」

 中から返事があり、扉を開けると、神永さんはプレジデントデスクの後ろにある大きなガラス窓から外を眺めていた。

「尾関さまをお連れしました」

「ありがとう。どうぞ」

 坂上さんに中に入るように促されて、社長室に足を踏み入れた。くるりと振り向いた神永さんは長い足でこちらに向かってくると、革張りの大きなソファに座るようにと手を差し出した。

「ありがとうございます。あの……お時間ギリギリになってしまい申し訳ありませんでした」

 腕時計を見ると、ちょうど約束の時間の十六時半だった。庭で話しこんでしまったからその分遅くなってしまったのだ。

「ああ。かまいませんよ。愉しかったですか、うちの従業員とのおしゃべりは」

「え、あ……もしかしてご覧になられていたんですか?」

 神永さんはわたしのことばに、イエスともノーとも言わずわずかに目を細めた。

 いつもの彼と雰囲気が違う。

 遅くなって怒らせてしまったのだろうか。
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