【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
「あの……」

――コンッコンッコンッ

わたしの言葉を遮るようにドアが強くノックされた。

ふたりともはじかれたようにドアの方に視線を向けると、こちらの返事も待たずに乱暴にドアが開いた。

「なんですか、いきなり。お客様がいらっしゃるのに」

「大変失礼いたしました。しかし……」

頭を下げたのは、坂上さんだ。先ほど案内してもらったときとは違い、心なしか顔色が悪くとても焦っているように見える。

「失礼します」と声をかけ、小走りで神永さんの元に駆け寄り、そして小声で何かを報告している。

「……そうですか」

先ほどから決してにこやかに話をしていたわけではないが、さらに難しい顔になる。

「まいったな」

「えぇ……いかがいたしましょうか」

 坂上さんも眉間に皺をよせている。何かトラブルがあったのは一目瞭然だ。

 神永さんは何かを思案しているのか、唇を引き結び目をつむっていた。

 深刻な状況なのは部外者のわたしでもわかる。そして今日は商談どころではないことも容易に想像できた。

「……あの、何かトラブルのようですので、また別の日に――」

 わたしが口を開いたとたん、突然神永さんが目を見開いた。その目は未だかつて無いほどするどくわたしを射貫いている。
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