【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
な、何? わたし何かいけないことした?

 縮み上がるわたしに向けられた視線が、急に和らいだ。と、いうよりも満面の笑みになる。

 しかしそれがかなりうさんくさく、わたしはまったく安心できなかった。

「では、失礼――」

「待ってください。ちょうどいい人がここにいた」

 神永さんはわたしから一切視線をそらさず、ニヤリと口角をあげた。

 ……ひっ、何!?

 本能で危険を察したわたしは、顔を引きつらせた。しかし彼の視線から逃げることができない。

「あの、えーっと」

戸惑っているわたしを無視して、神永さんが坂本さんに声をかける。

「尾関さんに、お茶をお出しして。たしか以前飲まれたハーブティーがお気に入りだったはずだ。それと今日の模擬披露宴で提供するはずのケーキも一緒に」

「……はい。かしこまりました」

 坂本さんは腑に落ちないようだったが、すぐに神永さんの指示に従うべく部屋を退出した。

「あの、お茶とか結構ですから。もう帰りますから」

 慌てて立ち上がるわたしの手を、神永さんがパシッと掴んだ。
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