【最愛婚シリーズ】クールな御曹司の過剰な求愛
真っ白なプリンセスラインのドレス。胸元がクロスドレープになっておりクラシカルなデザインが品の良さを際立たせていた。

ドレスの裾はホースヘアになっていてシンプルだけれど、動きがありデザイナーのこだわりを感じさせる一品だ。

きっとこれを身に着ければ、幸せで胸がいっぱいになるに違いない。

……しかし、わたしはさっきからひとり壁に向かいブツブツとつぶやいていた。

「右足から出て、それでここで左回転で親族席のほうを向いて、ふたりで礼……あれ、右回転だったっけ?」

先ほど坂上さんから教わった手順を思い出すべく、控室でああでもないこうでもないと動きのおさらいをする。そう多くない決まり事だが、緊張して全然頭に入ってこない。

「もう! どうしてこんなこと引き受けちゃったんだろう」

せっかく素敵なドレスを身につけていても、まったくもってウキウキしない。

こんな憂鬱な気持ちでウエディングドレスを着る人なんて、世の中にそうそういるもんじゃない。

これも貴重な体験--いつも楽観的なわたしだけど、そう思える余裕もなかった。

「え~と、もう一回、初めからやってみよう」
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