家庭訪問は恋の始まり
私は、手帳の裏表紙の所に挟んであったシールを取り出し、瀬崎さんの手の甲に1枚貼った。

かわいらしいイチゴドーナツのシール。

「よくがんばりました。
ご褒美です。」

そう。
小学校教諭にとって、1番馴染みがあるご褒美は、シール。

シールひとつで、不思議なくらい頑張れるんだから、子供ってかわいい。

「くくっ
これ、嘉人なら、喜ぶんだろうなぁ。」

瀬崎さんは苦笑してる。

「それは、もう、大喜びです。
ただ、嘉人くんは、予定帳に貼ったのに、
やっぱり剥がして、下敷きに貼り直し、
やっぱり剥がして、定規に貼って、
もう貼り付かなくなってるから、わざわざ
糊を塗って貼り直すんだけど、糊じゃ定規には
くっつかなくて剥がれてしまうから、
最終的には、怒って癇癪を起こすん
ですけどね。」

「くくっ
それは申し訳ない。」

「いえいえ、それも嘉人くんの個性ですから。
そうやって、シールは1度貼ったら、もう
剥がしちゃダメなんだって、学んでいくん
でしょうけど、今のところ、まだ学習できて
ません。
いつ、覚えられるのか、私も楽しみに
してます。」

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