仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
一希は予告通り、彼にしては早い夜八時過ぎに帰宅した。

「お帰りなさい」

リビングで出迎えた美琴に、一希は小さく頷いた。

「話をするんでしょう?」

「ああ」

一希は三人掛けのソファーに座り、ビジネスバッグから封筒を取り出すと、バッグは足元に置いた。

美琴は彼からはす向かいの一人がけのソファに腰かける。

「これが写真だ」

一希はローテーブルの上に、封筒から取り出した何かの集合写真を置く。

美琴はちらりとそれに目を遣ると、首を横に振った。

「告げ口するようだから限定はしないと言ったでしょう? 一希がそれでも後で話そうと言うから待っていたんだけど」

「美琴には害が及ばないように対処する。早く言ってくれ」

美琴は内心大きなため息を吐いた。

なんて身勝手なのだろうと苛立ちが湧き上がる。

話すのも無駄に感じ、自分の部屋に籠りたくなったけれど、一希とこうして話しあう機会は滅多にない。

家探しが無駄に終ってからいろいろ考えて、今夜は怒りを抑えて感情的にならず話そうと決心していた。

もちろん、一希の言いなりになる気はないので、しっかり主張はする。

「そういう問題じゃないわ。私は一希が今後どうする気なのか聞いておきたいの」

思い通りにならないからか、一希が不満そうに顔を曇らせる。

それでも、余程美琴に接触した友人を知りたいのか、仕方なさそうに言う。

「何が知りたいのか、具体的に言ってくれ」
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