仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~

(行きたい……)

慧と楽しく飲んで愚痴でも吐き出したら、気分はスッキリするだろう。寂しさなんて感じないはず。

(でも、無理だわ)

実体はなくとも自分は結婚しているのだ。

『誘ってくれてありがとう。でもこんな日に出かけると、神楽家と人たちから変に思われるかもしれないから。それに明日は一希と一緒に挨拶回りをするから、彼も今日は帰ってくるかもしれないし』

『そうか、残念だな』

そう言いながらも慧がしつこく誘ってくることは無かった。

代わりに、落ち着いたら初詣に行かないかと誘われた。

『昼間なら大丈夫だろ? 久しぶりに地元の神社に行こうぜ』

『うん、でも慧の方は問題ないの? 』

『俺? 仕事は調整してるし、大丈夫だけど』

『仕事もだけど、彼女が怒ったりしない? 異性の友人は嫌って人もいるし』

慧と初詣は楽しそうだけれど、誰かを不快にしてまで行くべきではない。

『そんなこと気にしてたのか? ご安心ください。現在完全な独り身なんで』

軽い調子の慧に美琴はホッとしながら答えた。

『それなら良かった。私は四日以降ならいつでも大丈夫だから』

『なら四日にしよう。でももし神楽さんが駄目だって言ったら、キャンセルでいいからな


『多分大丈夫。地元の神社なら、知り合いに会うこともないし』

一希は神楽家として問題のある行動を取らない限りは、美琴に関心がないのだから。

『そうか、じゃあ楽しみにしてる』

『うん、私も』

通話を終えたとき、寂しい気持ちは消えていた。

晴れ晴れした思いで過ごし、夜になるとひとり分の食事をつくり、早めに眠りにつく。



一希は元旦の朝早くに、一週間ぶりの帰宅をした。
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