仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
人の気配を感じなかったので、驚きながら振り返る。

するとそこには義母が佇んでおり、硬い表情で美琴を見据えていた。

「あ……お義母様……どうかなさいましたか?」

少し動揺しながらも作り笑いを浮かべる。

「話があります。少しいいかしら」

「話、ですか?」

「ええ、一希のことよ。付いて来て」

義母は美琴の返事を聞かずに廊下を進んで行く。

(一希の話って、何?)

状況が把握出来ないながらも、美琴は急ぎ後を追う。

義母はいくつかある応接室の内の一部屋に入って行った。


「あの、お話と言うのは、どのようなことでしょうか?」

ソファーに座るなり、美琴は義母に問いかけた。

義母の表情や態度はとても冷ややかで、出来れば早く話を終えたいと思ったから。

「一希とは上手くいっていないようね」

「……え?」

遠慮のない言葉に、動揺してしまう。

「一希は家に帰っていないそうね」

「あ、はい……仕事が忙しいようで」

義母が夫婦の現状について、どこまで知っているか分からないので、下手なことは言えない。

「政略結婚だったのだから、上手くいかなくても仕方がないわ」

「…………」

美琴の話など全く聞いていないような返事だった。

(何が言いたいの? 一希と不仲なことを怒っているの?)

義母の思惑が分からずに困惑する。
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