仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「こんな状況では、このまま夫婦でいるのは時間の無駄になります。美琴さん、一希と別れて貰えないかしら」

予想していなかった発言に、美琴は目を見開いた。

「そ、それは……一希さんと離婚しろと言う意味ですか?」

義母は頷く。

「……でもこの結婚は私の祖父とお義父様が決めたことですから離婚しろと言われても……一希さんがそう望まれてお義母様に相談されたのですか?」

一希は美琴との離婚は考えていないと言っていた。それに彼が母親にそんな内容を相談するとは思えないが。

「一希は不満があっても私に吐き出したりはしないわ。でも、一希には結婚を考えていた相手がいるのよ。今からでも軌道修正するべきだだわ」

「結婚を考えていた相手?」

(それは観原千夜子のこと?)

「その相手はどなたですか?」

不快な質問なのか、義母は眉間にシワを寄せた。

「それはあなたには関係のない話です。でも私はその方との結婚を今でも望んでいます」

冷ややかに告げられ、美琴は息を呑んだ。

(お義母様は、その人と面識が有って、しかも応援しているんだ)

はっきりとした答えは貰えなかったけれど、ほぼ間違いなく相手は観原千夜子だろう。

千夜子が義母の信頼を得ている事実に衝撃を受けた。彼女が神楽家にそんなに深く入り込んでいるとは考えていなかったからだ。

義母の厳しい視線を感じる。

内心のざわめきは消えないまま、美琴はなんとか喉から声を絞り出す。

「離婚の件は私の一存では決められません。祖父に相談して……」

「あなたが一希と結婚したのは、どうせお金が目的でしょう? 離婚になった場合は、ある程度の保証はします」

「……すみません、直ぐには返事が出来ません」

義母に財産目当てと言われたことが、真実なのに堪えた。

酷く侮辱された気になり、気分が沈むのを止められなかった。
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