仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
一希の足音が遠くなると、祖父は美琴に穏やかな目を向けた。
「何か話したそうにしているな」
思いがけないチャンスと、美琴は勢いこんで話し出す。
「はい。お祖父様にお願いがあるのです」
「お願い?」
祖父は、珍しいものでも見たように眉を上げる。
「はい。鈴本家の件です実は恵美子さんの負担が多すぎて困っているんです」
「あの家には定期的に支援をしているだろう」
「学費などは頂いてます。でも大人の手が足りなくて週に数日家事ヘルパーさんを頼んでいるのですが、それでも足りないんです。もう少し頼めるようにお祖父さまに援助をして頂きたいのです」
最後まで話すよりも先に、祖父の表情は陰って行った。そしてため息混じりに言う。
「まだそんなことを言っているのか。神楽家に嫁いで落ち着いたと思っていたが……残念だよ美琴」
「ざ、残念だよって……どうしてですか?」
なぜ、いかにも不服そうな顔をされなくてはならないのだろう。
(弟達の心配をするのは当たり前じゃない)
「お前は結婚して神楽家の人間になったんだ。鈴本家は切り離して考えなさい」
「そんな! 無理です。だってみんな困ってるんです。お父さんは病気だし、恵美子さんひとりで仕事も子育ても家事もしていて……」
「大変なのは分かる。だが、なぜ自分たちで育てられないのに、沢山子供を作った? あの後妻は昔から美琴に当たり前のように負担を強いる。まだ学生で、本来保護するべき存在だった美琴に子育てを押し付けていた。社会人になったあとは生活費を強要して来る。そんな状況をおかしいと思わないのか?」
「そ、それは……でも私たちは家族だから協力しないと」
「家族とはお互い助け合うものではないのか? 美琴は父親と継母に何をして貰っているんだ?」
「…………」
「私は孫が酷使されている状況を見過ごせない。だから神楽一希との結婚を勧めたんだよ」
「何か話したそうにしているな」
思いがけないチャンスと、美琴は勢いこんで話し出す。
「はい。お祖父様にお願いがあるのです」
「お願い?」
祖父は、珍しいものでも見たように眉を上げる。
「はい。鈴本家の件です実は恵美子さんの負担が多すぎて困っているんです」
「あの家には定期的に支援をしているだろう」
「学費などは頂いてます。でも大人の手が足りなくて週に数日家事ヘルパーさんを頼んでいるのですが、それでも足りないんです。もう少し頼めるようにお祖父さまに援助をして頂きたいのです」
最後まで話すよりも先に、祖父の表情は陰って行った。そしてため息混じりに言う。
「まだそんなことを言っているのか。神楽家に嫁いで落ち着いたと思っていたが……残念だよ美琴」
「ざ、残念だよって……どうしてですか?」
なぜ、いかにも不服そうな顔をされなくてはならないのだろう。
(弟達の心配をするのは当たり前じゃない)
「お前は結婚して神楽家の人間になったんだ。鈴本家は切り離して考えなさい」
「そんな! 無理です。だってみんな困ってるんです。お父さんは病気だし、恵美子さんひとりで仕事も子育ても家事もしていて……」
「大変なのは分かる。だが、なぜ自分たちで育てられないのに、沢山子供を作った? あの後妻は昔から美琴に当たり前のように負担を強いる。まだ学生で、本来保護するべき存在だった美琴に子育てを押し付けていた。社会人になったあとは生活費を強要して来る。そんな状況をおかしいと思わないのか?」
「そ、それは……でも私たちは家族だから協力しないと」
「家族とはお互い助け合うものではないのか? 美琴は父親と継母に何をして貰っているんだ?」
「…………」
「私は孫が酷使されている状況を見過ごせない。だから神楽一希との結婚を勧めたんだよ」