仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「俺の態度が原因で勝手な行動をしたと言うのか?」

「そもそも勝手なことをしているとも思ってないわ。友達と出かけると言っておいたでしょう? でもどちらにしても今更一希を夫となんて思えない。そんな考えにしたのは一希の態度が原因よ」

「ならば今後は改めよう」

一希は何でもないように言う。

「私の話聞いてた? 今更一希と夫婦としてやって行く気になんてなれないの。一希だって嫌いな私を妻として扱うなんて無理でしょう」

そう、本当に考えられないのだ。
以前は一希との距離を縮めたくて仕方なかったのに、今は近づくのが怖い。彼には心を見せられない、それ程に気持ちは冷え切っている。

表情に嫌悪感が滲んでいたのか、それを見た一希が皮肉な笑みになった。

「なぜだ? お前は結婚相手は誰でも良かったんだろう? ならば俺でも問題ないはずだ」

「!……そうだけど、一希とは結婚後の生活で駄目になったんだから、例外よ」

(どうして一希は急にこんなことを言い出したの?)

観原千夜子に何か吹き込まれたのだろうか。

警戒する美琴に、一希は驚くべき発言をした。

「今日、美琴の継母から連絡があった」

「え?……恵美子さんから?」
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