仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「離婚についてひとりで考えをまとめたかったから」

「離婚はふたりの問題だ。なぜひとりで考えようとする?」

「普通の夫婦ならね、でも私たちは違うでしょう? 一希は私に嘘を言ってばかりで全く信用できないわ。結局観原千夜子とは結婚を意識するような関係だったのだし」

美琴の言葉に、一希は溜息をはく。

「……俺は千夜子との結婚を考えたことはない」

「でもお義母様は彼女を一希の奥さんにしたいみたいだったわ。観原千夜子はお義母様の親友の娘なんですってね、自分の本当の娘のように感じているんじゃないの?」

千夜子の件になると美琴の口から嫌味が流暢に零れ落ちる。

一希の顔を見ていると、傷つけられた恨みをぶつけるように、つい言いたくなっていまうのだ。

一希は決まってそんな美琴を不快そうに睨み、反論して来る。

”千夜子を侮辱するのは許さない”と。

しかし今回は反論もなく、強引とも思える不自然さで話から千夜子を外して来た。

「離婚の件は改めて話し合うとして、本当に困っていないのか?」

「お金のこと?……一希から多く貰おうなんて考えたこともないわ」

はっきりと答えたが、千夜子がらみで責めたことに対しての反応が無いことに違和感を覚えた。

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