仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
一希の方も美琴の言動に怒りを覚えているようで、ときどき顔をしかめる。
「自分から離婚は言い出さないと言っていたはずだ。なぜ自分の発言を平気で翻す?」
「それは……さっきも言ったけど考え方が変わったし、それに一希は約束を守ってくれないじゃない」
「約束?」
一希は訝しそうな表情になる。
「観原千夜子を私に近付けないこと。私の交友関係に干渉しないこと。どちらも守られていないわ」
「千夜子を近づけた覚えはない」
心外そうに言う一希に、美琴はうんざりしながら告げる。
「たしかに家には近づかなくなったみたいだけど、彼女の存在は相変わらず消えてない。今だって彼女に言われて私と慧のことを問い質して来たんでしょう? 本当に不快で仕方ない」
「彼女とは不適切な関係ではないと言ったはずだ。なぜ誤解が解けたあとも嫌い続ける?」
一希の口調はきついものではなかったが美琴にとっては、聞き流せないものだった。
確かにはじめは一希の言う通り、夫の愛人への嫉妬心から避け嫌っていた。けれど今は違う。
「私は嫉妬して彼女を嫌っているんじゃないわ。あの人の人間性が許せないの」
怒りを込めて言えば、一希の顔に戸惑いが浮かぶ。
「……千夜子が美琴に何をしたと言うんだ?」
こんなふうに、具体的に聞かれるのは初めてだった。
一希は千夜子の件になると全て美琴が悪いと決めつけ、頭ごなしに文句を言うばかりだったから。
「自分から離婚は言い出さないと言っていたはずだ。なぜ自分の発言を平気で翻す?」
「それは……さっきも言ったけど考え方が変わったし、それに一希は約束を守ってくれないじゃない」
「約束?」
一希は訝しそうな表情になる。
「観原千夜子を私に近付けないこと。私の交友関係に干渉しないこと。どちらも守られていないわ」
「千夜子を近づけた覚えはない」
心外そうに言う一希に、美琴はうんざりしながら告げる。
「たしかに家には近づかなくなったみたいだけど、彼女の存在は相変わらず消えてない。今だって彼女に言われて私と慧のことを問い質して来たんでしょう? 本当に不快で仕方ない」
「彼女とは不適切な関係ではないと言ったはずだ。なぜ誤解が解けたあとも嫌い続ける?」
一希の口調はきついものではなかったが美琴にとっては、聞き流せないものだった。
確かにはじめは一希の言う通り、夫の愛人への嫉妬心から避け嫌っていた。けれど今は違う。
「私は嫉妬して彼女を嫌っているんじゃないわ。あの人の人間性が許せないの」
怒りを込めて言えば、一希の顔に戸惑いが浮かぶ。
「……千夜子が美琴に何をしたと言うんだ?」
こんなふうに、具体的に聞かれるのは初めてだった。
一希は千夜子の件になると全て美琴が悪いと決めつけ、頭ごなしに文句を言うばかりだったから。