仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「一希どうかしたの?」

「……いや」

「早く食べた方がいいわ。今日は予定が詰まってるわよ」

千夜子はにこりとほほ笑むと、コーヒーをコクリと飲む。

「ねえ、美琴さんに葉月慧とのこと聞いた?」

「ああ」

「彼女なんて答えたの?」

千夜子は興味深々といった様子だ。

「葉月慧は昔からの友人だそうだ」

「それで?」

「不適切な関係ではないと言っていた」

その後、自分の交友関係に口出しするなと強く言われたが、それを千夜子に話す気にはなれなかった。

千夜子は呆れたような顔をした。

「それを信じたの? 違うに決まってるじゃない、どうして追及しないの? せっかくのチャンスなのに」

「チャンス?」

「離婚する正当な言い分が出来たじゃない。美琴さんが不貞行為を働いたとなれば、久我山だって文句は言えないはずよ」

力強く語る千夜子に、一希は内心溜息を吐いた。

千夜子に結婚が不本意だと漏らしたのは自分だが、ここまで介入してくるとは思わなかった。
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