仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「ねえ、前から気になっていたんだけど、美琴さんって一希のことを以前から知っていたんじゃない? 彼女の態度を見ているとそう思うの。でも一希はあの子を見かけたことは無いのよね」
千夜子は首を傾げて独り言のように呟く。
彼女には、美琴との出会いを話していない。
千夜子と出会った十五歳のときよりも前に美琴と過ごした時期があったことを。
千夜子とはお互い嘘は言わないと誓い合っているが、言わなくてもいいことはある。
美琴の話を千夜子としたいとは思わなかった。この話題も、もう終わりにしたい。
しかし、ふと思い立ち問いかけた。
「俺が名古屋に視察に行ったときのことを覚えているか?」
「ええ、私は同行しなかったから向こうでのことは分からないけど」
「あの日俺の家に行って貰ったが、離れに行ったか?」
一希の言葉に千夜子は一瞬表情を険しくする。けれどそれは直ぐに消えて口角を上げていつもの余裕ある笑顔になった。
「行ってないわ。一希に頼まれたのは母屋への用だったから。なぜそんなことを聞くの?」
千夜子が何かを誤魔化している様子はなかった。
美琴はその日、自宅で千夜子と遭遇したと言っていた。しかも自分のベッドに寝ていたという。
初めは何を馬鹿なことを言っているのだと取り合わなかったが、考えてみれば美琴の様子が変わったのはあの日を境にしてだ。
もしかして、何らかの事情で千夜子が自宅に寄ったのかもしれないと考えたが……。
千夜子は首を傾げて独り言のように呟く。
彼女には、美琴との出会いを話していない。
千夜子と出会った十五歳のときよりも前に美琴と過ごした時期があったことを。
千夜子とはお互い嘘は言わないと誓い合っているが、言わなくてもいいことはある。
美琴の話を千夜子としたいとは思わなかった。この話題も、もう終わりにしたい。
しかし、ふと思い立ち問いかけた。
「俺が名古屋に視察に行ったときのことを覚えているか?」
「ええ、私は同行しなかったから向こうでのことは分からないけど」
「あの日俺の家に行って貰ったが、離れに行ったか?」
一希の言葉に千夜子は一瞬表情を険しくする。けれどそれは直ぐに消えて口角を上げていつもの余裕ある笑顔になった。
「行ってないわ。一希に頼まれたのは母屋への用だったから。なぜそんなことを聞くの?」
千夜子が何かを誤魔化している様子はなかった。
美琴はその日、自宅で千夜子と遭遇したと言っていた。しかも自分のベッドに寝ていたという。
初めは何を馬鹿なことを言っているのだと取り合わなかったが、考えてみれば美琴の様子が変わったのはあの日を境にしてだ。
もしかして、何らかの事情で千夜子が自宅に寄ったのかもしれないと考えたが……。