仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
「いや……ただの確認だ。変なことを聞いて悪かったな」

「もしかして美琴さんになにか言われたの？」

「そういうわけじゃない」

「いいえ美琴さん絡みね、一希がこんなことを言い出すなんて他に考えられないもの。もしかして私が離れに来たとでも言われたの？」

千夜子は一希をじっと見つめて言う。

「……なぜそう思う？　美琴と会ったのは母屋から車に戻るときだったと言っていたはずだ。本当は違うのか？」

一希の言葉に、千夜子は激しく顔をしかめた。

「まさか一希は私が嘘を吐いたと思ってるの？」

「……そうじゃない、ただ認識違いがあるかと思ったんだ」

「認識違いって言いだすのはやっぱり美琴さんになにか吹き込まれたからでしょう？　あの子の言うことと私の言葉、一希はどちらを信じるの？」

「…………」

千夜子が怒りに満ちた目で迫ってくる。

その強い眼差しを受け止めている内に、違和感が生まれて来た。

（この千夜子を相手に、美琴が言い合い勝つなんて出来るのか？）

千夜子は美琴に何度も責められたと言っていたし、美琴もはっきりと千夜子の存在が不快だと宣言している。

妻と秘書という立場だけ見れば美琴の方が強い。だから千夜子の訴えを疑いもしなかった。
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