仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「千夜子が嘘を言うとは思っていない。だが美琴の言うこと全てが偽りとも思えない。何か誤解が有るんじゃないか?」

「誤解? そんなものないわ。あの子は私が気に入らないのよ。一希のお見舞いに行けば追い返されるし、目障りだとも言われたこともあるのよ? 酷いと思わない?」

千夜子は不満そうに一希を見つめてる。

「千夜子は言い返さなさかったのか? 美琴に言い負かされるとは思えないが」

そう問えば千夜子は僅かに口ごもる。

「……あの子と口論していいなら負けないわ。でも一応一希の奥さんだからこっちが引いたのよ。ろくな社会人経験もない年下の子に罵倒されてプライドが傷ついたわ」

「そうか……美琴がすまなかった」

一希が謝ると千夜子の機嫌は悪化し、不満そうに眉根を寄せた。

「なぜ一希が謝るの? 私は一希じゃなくてあの子のことを怒ってるのよ?」

どうやら何を言っても千夜子を苛立たせるだけのようだ。

一希の違和感も解決しそうもない。

内心溜息を吐き、千夜子に告げる。

「仕事をする。午前中の会議の資料を早めに用意しておいてくれ、確認したい」

「あら、会議の内容は頭に入っているんじゃないの?」

「連休後だからな、念のためだ」

「そう……分かったわ。サンドイッチ、残さずに食べてね」

千夜子は腑に落ちない様子ながらも、机を片付け資料作成の為自分の席のある秘書室へ向かう。

彼女の姿が部屋から消えると、一希はスマートフォンを取り出した。
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