仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
『娘が亡くなる寸前に私に話したんだ。偶然君の母親と観原家の娘との会話を聞いてしまったようでずっと胸に秘めていたが、最後に打ち明けたくなったのだろう』

『会話? 一体なにを』

『肝心なところを聞いてしまったようだ。かなり動揺して悩んでいた。そのせいで寛子さんとは疎遠になってしまったようだが……私は娘の言葉の裏付けをするために調査をしたんだよ。今渡したのがその結果だ』

再度調査書を確認する。久我山俊三が自信を持って語る通り、全て真実が記されていた。

千夜子の名前も出て来ている。

『……俺になにを望むのですか?』

金か、それとも神楽グループ代表の座を退くように要求してくるつもりか?

彼に逆らうことは出来ないが、どちらも手放すことは出来ない。

一希にとっては無くても困らないものでいつかは手放す気でいるものでも、それは“今”ではないからだ。

緊張しながら続く言葉を待った。

彼はゆっくりと口を開いた。

『私の孫娘と結婚して欲しい』

一希は思わず目を見開いた。

『結婚? 孫娘?』

戸惑いの直後、理解した。

久我山俊三の孫娘とは、先ほど思い出していた少女のことだ。
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