仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
『一希、私、美琴さんに追い返されたわ』

千夜子が耐えられないといった様子で訴えてくる。
一希を心配して見舞いに来たのに追い返されたと言うのだ。

『美琴が? 追い返したのは父ではないのか?』

『お父様ではないわ。美琴さんに言われたの。二度と来て欲しくないと言われたわ。あの子は私を目の敵にしているのよ。ねえ、どうして私が追い出されなくちゃいけないの? 私は神楽家の敷地に足を踏み入れちゃいけないと言うの?』

『そんなことある訳がないだろう?』

嘆く千夜子の声を聞きながら、失望していた。

やはり美琴と穏やかな生活を送れるはずがない。

彼女に対し怒りが湧いた。


その後は当然のように、激しい言い合いになった。

家の中は、重苦しい空気で満たされる。


翌日からは居心地の悪い家を避ける日々が続いていた。

お互いを避けながら過ごしていたある日、問題が発生した。

一希の頼みで神楽家を訪れた千夜子に、美琴が許しがたい暴言を吐いたのだ。

項垂れる千夜子を目にして、美琴に対する怒りが抑えられなくなった。

帰宅した途端、いつもの言い合いを始めていた。
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