仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
離婚を告げられた日以来、一希が自宅に帰っても、美琴が玄関脇の部屋から出て来ることはなかった。
時折小さな音がするので起きてはいるようだが、一希がリビングにいる間は決して出て来ない。
明らかに避けているのを察し、一希もリビングには長居しないようにしていた。
家にいる間は書斎にいる時間が長くなっていた。
数日後。その夜はいつもより早く夜七時過ぎに自宅に帰り着いた。
その為美琴はキッチンに居た。
目が合うと「お帰りなさい」と声を掛けられる。
しかし目は笑っていない。
礼儀として挨拶をして来たのだと分かるものだった。
居心地の悪さを感じながら頷こうとして、そう言えば今まで自分は美琴に挨拶をしていただろうかと考えた。
(……していないな)
いつも美琴に声をかけられ、それに応えて相槌を打つだけ。
初めは強要された結婚が不満で親しくなど出来なかったからだが、我ながら礼儀に反していた。
「ただいま」
そう声にすると、美琴は驚いたように家事の手を止めて一希を見つめて来た。
しかし、しばらくすると会話を拒絶するように無言で目を逸らす。
なにか声をかけたいと思ったが、適当な言葉が思い浮かばず、一希も無言で書斎に向かった。
時折小さな音がするので起きてはいるようだが、一希がリビングにいる間は決して出て来ない。
明らかに避けているのを察し、一希もリビングには長居しないようにしていた。
家にいる間は書斎にいる時間が長くなっていた。
数日後。その夜はいつもより早く夜七時過ぎに自宅に帰り着いた。
その為美琴はキッチンに居た。
目が合うと「お帰りなさい」と声を掛けられる。
しかし目は笑っていない。
礼儀として挨拶をして来たのだと分かるものだった。
居心地の悪さを感じながら頷こうとして、そう言えば今まで自分は美琴に挨拶をしていただろうかと考えた。
(……していないな)
いつも美琴に声をかけられ、それに応えて相槌を打つだけ。
初めは強要された結婚が不満で親しくなど出来なかったからだが、我ながら礼儀に反していた。
「ただいま」
そう声にすると、美琴は驚いたように家事の手を止めて一希を見つめて来た。
しかし、しばらくすると会話を拒絶するように無言で目を逸らす。
なにか声をかけたいと思ったが、適当な言葉が思い浮かばず、一希も無言で書斎に向かった。