仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
翌日、朝オフィスでいつも通り千夜子と顔を合わせて直ぐに切り出した。

「話があるんだ。どこかで休憩を取れないか?」

「いいわよ、午後二時過ぎから一時間ちょっと空くわ。どこか予約する?」

「ああ、個室がいい」

「分かったわ」

千夜子は上機嫌で言い、執務室を出て行く。

入れ替えに第一秘書が入室して来たので、来月の視察計画について打合せをする。

ひと段落着くと、第一秘書が扉の方を気にしながら口を開いた。

「観原さんのことですが、そろそろ配置換えを検討してもよいのでは?」

重い気持ちになり、一希は無意識に目を伏せた。

第一秘書は優秀で仕事上頼りになるが、元は父、神楽朗の忠実な部下だった。

今でもその忠誠心は変わってなく、一希の動向を密かに神楽朗に報告しているのを知っていた。

父が千夜子を敬遠しているせいか、第一秘書も千夜子を信頼できない様子だった。

それを敏感に感じ取っているのか、千夜子も第一秘書を疎ましいと言っていた。

「観原さんは優秀ですから、いつまでも私のアシスタントでは物足りないでしょう。良いポジションを用意してあげてはいかがでしょうか?」

言葉は丁寧だが結局千夜子と距離を置けと言うことだ。

第一秘書にも父にも、もう何度も言われた言葉だ。

「……検討する」

そう答えると第一秘書はあからさまにほっとした様子を見せた。

(もう時間がないな)

今のまま過ごすのは限界だと感じていた。

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