仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「あ……いや、何でもない」

「何でもないって……ねえ、どうして最近早く帰ってくるの?」

美琴の眉間にはシワが寄っている。

それほど自分と顔を合わすのが不快なのだろうかと、重い気持ちになった。

「帰って来たら駄目か?」

「そんなこと言ってないでしょ? ただ、なんで早いのかなって不思議で。今まで少しも家に寄り着かなかったのに」

「…………」

なんと答えればいいのか分からなかった。

美琴の問いは、つい先ほどまで自分が考えていたことと同じだ。

なぜ今更律儀に帰るのか。

明確な理由を言葉に出来ない。ただ自分でも不思議だが帰りたいと思うのだ。

黙ったままの一希に美琴は溜息を吐く。

そのまま踵を返しリビングを出て行こうとした彼女は、ふと気づいたように立ち止まり一希を振り返った。

「ねえ……ちゃんとご飯は食べてるんだよね?」

美琴はじっと一希の目を見て言う。正面から視線が交わり落ち着かない気持ちになる。

そのせいか、取り繕うことが出来なかった。

「いや、食べていない」

「え?……もしかして昨日も?」

「ああ」

「なんで? お腹空かないの?」

「空いてる」

美琴は丸い目を大きく見開いた。

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