仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「それなら、どうして言わないの?」

「もう食事は終わった様子だったからだ」

「だからって……」

美琴は呆れたように呟いてから「ちょっと待ってて」と言いキッチンに向かう。

そう時間を置かずに、ハンバーグと白米と味噌汁が出て来たから驚いた。

美琴はソファー前のローテーブルにそれらを手早く並べた。

「どうぞ。私用に作っておいたもので申し訳ないのだけど」

一希は僅かに眉をひそめた。

「これは本来は美琴の分なのか?」

そうだとしたら自分だけ食べる訳にはいかないだろう。

「……私はもう食べたから大丈夫。多めに作って冷凍しているの」

「そうか……」

美琴は冷凍と言ったが、目の前の食事は温かな湯気を立てており、食欲を刺激した。

「いただきます」

美琴の分の食事は無かったが、彼女は自分の部屋に戻ることなくリビングの続きのダイニングルームの椅子に座った。

どうやら食べ終わるのを待ってくれるようだ。ふたりの間には距離があり会話をする雰囲気ではないけれど。

驚くくらいの手際の良さで用意をしてくれた、美琴曰く“たいしたものではない”食事は、とても美味しかった。

食事を美味しいと感じるのは、いつ以来だろうかと考える。

もともと食に大した拘りがなく、エネルギー摂取が果たせれば問題ないから、意識したことが無かった。

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