仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「あの、いつもの時間に起きてこないから、どうしたのかと思って」

「……今、何時だ?」

「え? あ、ええと、六時十分だけど」

そう答えれば、一希は勢いよく体を起こし、ベッドを降りてバスルームへ向かった。

どうやら休みではなかったようだ。

余計なことをしたと怒られずに済んでホッとする。

一希は十五分でシャワーを終えると、手早く着替えを済ませ、もちろん朝食は取らずに出て行った。


(一希、やっぱり具合が悪かったのかな? 寝坊なんて珍しい)

ずっと忙しくしていたから疲労が溜まっているのだろう。

家ではゆっくりして欲しいけど、美琴が居ては安らげないのだから、どうすればいいのか分からなくなる。

妻としてサポートしたくても、その行為は迷惑でしかないのだから。

(私が出て行った方が一希の為になるんだろうけど、それは出来ないし)

祖父との約束は結婚して後継を産むこと。
その約束を果たせば、離婚も可能なのだろうけど今の時点では家を出られない。

悩んでいるうちに、いつの間にか夕方になった。

そろそろ夕食の支度をしようかと思っていると、玄関の方で物音がした。

母屋から誰か来たのかと見に行くと、ちょうどのタイミングで扉が開いた。

その先に居たのは、一希と寄り添うように立つ観原千夜子で、美琴はその場に立ち尽くした。
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