仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
慧がときどき様子伺いの連絡をくれた。

心配してくれているのが伝わって来て、嬉しくなる。

駅前のカフェで待ち合わせをして報告がてら、今後の生活の相談をした。

「私、高校を卒業したあとずっと家の文具店の仕事をしてたから、仕事と言っても何をすればいいか迷うんだ。未経験では簡単に雇ってくれるところも無いだろうし」

「文具店の仕事は気が進まないのか? 大手で社員募集しているところがあるだろう?」

慧はカフェラテを飲みながら相槌を打つ。

「ある程度の知識はあるからそれもいいかと思うんだけど、新しいことやってみたい気もするんだよね」

「やりたい仕事があるのか?」

「具体的には無いんだけど、私高校卒業したとき進路に選択の余地が無かったから。これから自由に出来るとなって、凄く迷い始めたの」

一希とふたりで食事をしていると、穏やかな生活の終わりを感じ、切ない気持ちになる。

一方で新しい生活が始まる期待も膨らんでいた。

慧はそんな気持ちを察しているようで、柔らかく微笑む。

「ゆっくり考えたらいい。経験のない仕事でも好きなことが見つかったら挑戦しろよ。まだ二十四歳なんだからなんだって出来るだろ?」

「そうかな? でも私の場合学歴がね……」

「大学に行きたいなら今からだって行けばいいだろ?」

「今から?」

「勉強したいのに、遅すぎるってことはないだろ」

その言葉に納得して頷く。
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