仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
「何も知らなかったみたいだな、大丈夫か？」

慧の声になんとか頷く。

「うん、でもどうして一希が後継者の地位を失うの？　今、一希がどうしてるのか知っている？」

「いや、神楽さんの個人的なことまでは分からない」

「あの……観原さんは？」

慧の表情が暗くなった。

「理由は分からないが退職したようだ」

「えっ？」

美琴は再び驚愕の声を上げる。

「一希と一緒に辞めたってこと？」

あの二人は今一緒に過ごしているのだろうか。

考えると不快感に襲われる。

「それはまだ分かっていない」

「そう……」

「神楽さんと連絡を取っていないと言っていたな、代理人を立てているのか？」

「多分、立てていないと思う。最後に話したとき離婚を進めるって話してたけど、それ以来何も言って来ないから」

「そうか……神楽さんは何を考えているんだろうな」

慧は浮かない表情で呟く。

「離婚したいって意思ははっきりしているみたい。これからどうするつもりなのかは何も聞いてないから分からない……他人になる私になんて話す必要が無いと思っているのかも」

少し投げやりに言うと、慧は慎重な口調で言う。

「俺はそうは思わない。神楽さんは妻の美琴に対して無責任な対応はしないはずだ。美琴が考えているより彼は美琴を大切にしているんじゃないか？」

慧の言葉は意外で戸惑いを覚える。

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