仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「どうしてそう思うの? 前は一希のこと酷いって私が言うと同意してくれてたのに」

慧は少し気まずそうな顔をした。

「言ってなかったけど、以前、神楽さんと会って話したんだ」

「一希と? どうして?」

「まあいろいろあって。そこは突っ込まないでくれると助かる。直接話して感じたのは、神楽さんは美琴を話に聞いていた程蔑ろにしていないってことだった。むしろ……」

「むしろ?」

「いや、とにかく神楽さんは分かり辛いけど美琴をちゃんと妻だと思ってる。だから美琴に何も話さないのはそれなりの事情があるからだと思う。見切りをつけないで話合った方がいい」

慧に優しく、それでいて諭すように言われると気持ちが落ち着いて来る。

「話し合うって言っても、この前連絡したときは直ぐに切られてしまったの。私と会話したくないようだった」

「美琴がそう受け取っただけで、本人が話したくないと言った訳じゃないだろ? 神楽さんはかなり不器用な感じだから気の利いたセリフは期待できなそうだ」

「確かに直接否定されたんじゃないけど」

どうして一度会って話しただけの慧がここまで一希の性格分析が出来ているのだろう。

「私より慧の方が一希を理解してそう」

「その言い方、なんとなく嫌だな」

「でも本当に慧が一希と結婚してたら上手くいってたかも。観原千夜子にだって負けないだろうし、一希のことも上手く扱えそうだし」

「やめてくれ」

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