仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
慧は心底嫌そうな顔をした後、気を取り直したように言う。

「とにかく思い込みで判断しないでしっかり話し合えよ」

「頑張ってみる。何が起きてるのか分からないけど……忙しいのにごめんね? 私の事情で煩わせてしまって」

「そんなの構わない、煩わしいなんて思ってないし」

心外そうな慧に、美琴は首を傾げた。

「でも、最近忙しいんでしょう? 全然連絡も無かったし」

「いや、そうじゃないけど、まあ思うところあって」

慧にしては珍しく端切れ悪い返事がくる。

「思うところ?」

「美琴こそ大変な時期だってのに、全然連絡して来なかったよな」

「それは……」

何と答えようかと美琴が迷っている内に、慧がさらりと答えを口にする。

「鳥崎に何か言われたんだろ?」

「え? 優香と話したの?」

「いや、でもあいつと美琴の行動から想像つく」

「そ、そっか。相変わらず洞察力高いね」

感心していると、慧が浮かない表情なことに気が付いた。

「……慧は優香と付き合ってる訳じゃないんでしょう?」

踏み込み過ぎかと思いながらも、口にしてしまった。

「ああ。見て分かるだろ?」

「まあ……慧ってあまり優香と話さないし仲良さそうには見えなかったから」

それでも優香は慧のことが好きだ。
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