仮面夫婦～御曹司は愛しい妻を溺愛したい～
「仲が悪いっていうか、距離を置いてたんだよ。あいつは今うちのホテルで働いてるし、立場的にも親しくし過ぎるのは良く無いからな」

「そっか……」

相槌を打ったけれど、慧は優香の気持ちに気付いているのだろうと感じた。

だからこそ、優香が美琴のところに来たのを予想出来たのだろう。

（気持ちに応えられないから距離を追いてるの？）


なんとなく気まずい空気が漂い沈黙が訪れる。
慧が先に口を開いた。

「美琴は神楽さんが好きなんだな」

「えっ？」

突然の言葉に驚いてしまう。

「美琴が怒ったり嫉妬したり悲しんだりするのは全て神楽さんが絡んでることだと改めて感じた」

「そんなことないよ」

「鳥崎に理不尽なこと言われても平然としてるだろ？　それは俺に関してのことだからだ。もし神楽さん絡みならどうなってたんだろうな？」

「一希とは思いがけなかったり、許容範囲外のことばかり起きるから。それに形だけとはいえ結婚してるんだし」

言い訳のように言葉を並べる。けれど慧の言う通りであると自覚していた。

（私、一希のことになると過剰に反応してしまう）

千夜子とのことで一希への気持ちは冷めきったと思っていた時ですら、彼と対峙すると怒りに襲われ感情がコントロールできなくなったのだ。
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