仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「最後のチャンス……そうだね」

このまま離れたら一希とは二度と関わらない人生になるかもしれない。

(一希を今も好きだって言える自信がない。自分の気持ちがはっきりしない。、でもこのままじゃ終わりたくないのは確か)

「ありがとう慧。なんか吹っ切れた気がする」

慧の“受け入れる”を真に受けた訳じゃないけれど、心強くなった。

「ああ、頑張れよ。あと鳥崎のことは気にしなくていいから。彼女が美琴に話した詳細は知らないが、それは彼女の思惑でしかない。俺は美琴と疎遠になるつもりはないから。何か有ったら遠慮なく連絡して来いよ」

「でも……」

それでいいのだろうか。
友人の立場に甘えて、誰かの邪魔にはなりたくない。

「自分の立場と置き換えて考えてるなら間違いだから。俺は鳥崎を女として見てないし、特別に大切にしたい相手じゃないんだ。もしそんな相手がこの先現れたら誰よりも優先するし、美琴にもそうはっきり伝える」

慧の言葉には強い意志を感じた。

(彼の恋人になる子はきっと幸せだろうな)

心に決めた相手が出来たら、心に寄り添い大切にするのだろう。
女友達の存在で不安にさせるような真似はしない人なのだ。

「分かった。私も本当は慧と距離を置くの嫌だったんだ。一番の友達だと思ってたから会えないのは寂しいし」

「友達か……やっぱりそうだよな」

「迷惑だった?」

「いや、一番のって言って貰えて光栄だ。上手くいくことを祈ってるな」

慧に励まされ、勇気が湧いて来るのを感じていた。
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