仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
代理人が帰ったあと、祖父と話し合った。
祖父は一希の意思が固まっている以上、離婚を反対しない、美琴が決めろとだけ言った。
結婚のときは強引だったのに、なぜ今になって美琴の意思に任せるのか。
(お祖父さんが反対してくれたら良かったのに)
結婚のときのように強引に一希に離婚はしないと迫ってくれたら。
話合いの機会を設けてくれたらいいのに。
そんな風に人頼みにしてしまう程、追い詰められた気持ちになっていた。
代理人が離婚届けを取りに来る日は迫っている。
それでも署名は出来ずに、慧に頼んで一希を捜していたが未だ行方が掴めなかった。
そんなある日、久我山家に思いがけない人物訪ねて来た。
「お久しぶりね」
堂々とした態度で美琴の前に現れたのは、豪奢なブランドもののスーツを身に纏った観原千夜子だった。