仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
「観原さんの結婚相手はどなたなんですか?」
聞いた瞬間は動揺したが、一希ではないような気がして来ていた。
千夜子は美琴にきつい眼差しを向けてから、吐き出すように言った。
「一希の従兄。彼に代わって神楽グループの後継者になった男性よ」
「……え?」
思いもしなかった答えだった。
唖然とする美琴に、千夜子は勝ち誇ったように笑ってみせた。
「神楽グループ後継者の妻。少し前まであなたがいた地位よ。私にとって代わられて残念ね」
「どうして?……あなたは一希が好きだったんじゃないの?」
これまでの千夜子の言動から明らかだ。
一希も恋愛感情は認めないながらも、千夜子を大切な相手だとはっきり言っていた。
(どういうことなの?)
一希の後任の男性が従兄だと言うなら、美琴も面識がある。
結婚式や元旦での集まりで顔を合わせ、一言二言、言葉を交わした。
彼は義父の弟の子だが一希より少し年上。
一希のような人目を引く華やかさはないが、真面目そうな感じの良い男性だ。けれど千夜子の隣に並ぶ姿はイメージ出来ない。
客観的に見れば蠱惑的な美女の千夜子には、一希のような男性が似合っている。
千夜子と従兄が交際していた気配も無かった。それがなぜ急に結婚になるのか理解出来なかった。