仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
最終バスに間に合ったので、宿泊はキャンセルして東京に戻ることになった。

一希が駅まで送ってくれた。

「ありがとう……東京に戻ったら離婚届けを書くね」

「ああ」

「今日聞いたことは誰にも言わないと誓うから」

「ああ、信用している」

一希は穏やかに頷く。

こみ上げるものを耐え、美琴は笑顔を浮かべた。

「いつ日本を発つの?」

「半月後の予定だ」

「そう……最後に見送りに行ってもいい?」

「いや、俺たちはもう会わない方がいい」

拒否されたショックで胸が痛む。

それを隠して明るく言った。

「分かった……じゃあ、これが本当にお別れなんだね」

「ああ」

一希はいつものように言葉少なく答える。けれどその瞳は優しくて……悲しみが襲って来て、耐えられなくなりそうだった。


「今までありがとう。いろいろ有ったけど、私、一希と結婚したこと後悔してないよ
……じゃあ、元気でね。さようなら」

なんとか最後の別れを言いきると、バスに乗り込んだ。

背中から一希の声が追いかけて来る。

「俺も後悔していない。ありがとう」

振り返ると一希は美琴を真っすぐ見つめていた。

駆け寄りたい気持ちを堪えて頷く。

バスが走り出すと、我慢していた涙が溢れた。
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