仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
出会った頃の一希を思い出す。

彼は太陽のように明るく自信に溢れて見えた。影などどこにもなかった。

「秘密を知る前だったからでしょう」

再会したとき彼はずいぶん変わったと感じた。

そうなるだけの出来事が有ったからだったのだ。

「神楽は一希君にかつてのような明るさと自信を取り戻して欲しかったんだ」

「やっぱり私を選ばなかった方が良かったんです」

「美琴ならば誰より一希君を想ってくれるだろうと期待したんだよ。私も二人はお似合いだと思ったから話を進めたんだ」

「……だったら初めから事情を教えてくれたら良かったのに」

そうすればもっと違った対応が出来たはずだ。
「一希君も美琴も自分の意思で変わって欲しかった。それに彼の秘密は話せることじゃないだろう」

「そうですけど、でも……」

「残念な結果になったが仕方がない。これもふたりで選んだ道なのだから。美琴は今後の身の振り方を考えなさい。再婚するまでこの家にいるのは構わない、今度こそ幸せになれることを願っているよ」

祖父は穏やかに言う。
けれどそれはとても難しいことに感じた。
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