仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~

一希が日本を発ったあと、正式に離婚が成立したと連絡が入った。

美琴は落ち着いた気持ちでその報告を聞き、祖父に報告をした。

それから自分で仕事を探し、久我山家から通勤し忙しく日々を過ごした。

働く内に何人かの男性に声をかけられたけれど、心が揺らぐことは一度も無かった。




それから一年後。

「慧、ごめんね、結構待った?」

美琴達の地元の駅のホームで待ち合わせしていた慧に、美琴は駆け寄る。

「それほどでもない。残業だったのか?」

「うん、急いで終わらせたんだけど間に合わなかった」

会話をしながら足を進め、待ち合わせの店に向かう。

今日は定期的に開かれる中学時代の仲間との食事会だ。

隣を歩く慧は相変わらず人目を引く華やかな容貌で、これで付き合っている相手がいないと言うのだから信じられない。

ついじっと見ていると気付いた慧が、からかうように言った。

「今、俺のこといいなと思っただろ?」

「まさか」

「はいはい、美琴は神楽さん一筋だもんな」

ちょっといじけた様子の慧に、美琴は慌てて取り繕う。

「でも慧はイケメンになったとはいつも思ってるよ」

現に今日の集まりに来る友人で慧を好きな子がいるのだ。

慧の方は気が無いようだけれど、彼はどこでもモテそうだ。

その為トラブルも多いようだけれど。同じくクラスメートの優香にしつこくされて苦労していたのをよく覚えている。今はもう解決したようで優香は集まりに来なくなったのだけれど。
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